昆布は本来、天然の産物ですが、産地と銘柄のページでも触れた通り、天然以外にも養殖・促成の商品があります。多くの魚介類にも見られる天然ものと養殖もの。昆布におけるその違いについてご紹介します。
天然昆布
岩礁に、自然に着生した昆布。
通常、前年の水昆布が枯れて、そこから生える2年経過のものを採取します。そのため、作柄の良し悪しが1年ごとになり、価格も乱高下しがちです。
特徴
- 噛めば噛むほど味が出る
- 粘りのある風味
- 適度な歯ごたえ
養殖昆布
ロープに種苗を着生させ、天然と同様に2年かけて養殖したもの。利尻・羅臼・道南白口浜といった高級銘柄の産地でも盛んに行われています。
特徴
- 見かけは天然より立派
- 昆布の繊維質自体は天然より柔らかい
- 適度な厚さ
促成
1年間で養殖される昆布。道南地方で盛んに生産されており、計画生産のため安定した供給が見込める商品です。
味の特徴
- 幅広くて色目も黒いものが多い
- 適度な厚さで柔らかい
- あっさりとした仕上がり
中央市場で商売していますと、店に陳列している昆布の違いを聞かれることがよくあります。「こっちは天然でこっちは養殖ですよ」などと説明すると、大半のお客様は「養殖?駄目。」と、養殖魚などのイメージのせいでしょうか、先入観だけで天然良品、養殖格落ち品と決め付けられる方がいらっしゃいます。
そんな時、私達はお求めの昆布の用途を尋ねます。例えば千枚漬用の場合、昔ながらのよく粘る商品を作りたいために風味のある高価な天然利尻昆布を求める方もいれば、スーパーや百貨店などに大量に出荷する都合上、粘りの控えめな安定供給の見込める養殖利尻昆布や道南産の促成昆布を望むメーカーの方もいます。余談ですが、千枚漬の昆布の粘りを、腐って糸を引いていると勘違いされる方が多いそうです。また最近、昆布締め用の昆布を求められる方が増えているのですが、私達は天然ものではなく促成の昆布をおすすめします。なぜなら幅広で使い易く、素材の風味を邪魔せず、そして粘りすぎずと、昆布締めに最適だと考えるからです。実際、昆布締めの本場である富山県でもこの折昆布を使用している場合が多いようです。このように、良い昆布の選び方とは、用途や商売の都合に適した商品を選ぶことが大切なのではないかと思います。私たちは、「○○にはどんな昆布を使えばよいのか」といった質問や、「煮ても柔らかくならない」、逆に「柔らかすぎる」、「出しの出が薄い・濁る」など、お客様から寄せられる昆布に関するクレームを参考に、そのお客様の用途に最適な商品をご案内できるよう努めています。