京都と利尻昆布
皆さんは、京都で最も使用される昆布は何かご存知ですか?関東から中部では、生産数量が多く需要の多い日高昆布が、大阪では道南産真昆布などの銘柄がありますが、京都では天然物の「利尻昆布」が一般的です。利尻昆布は利尻島、礼文島、稚内〜宗谷岬の道北地方で7月から9月頃にかけて採取、結束し、出荷されます。こちらでは利尻昆布の解説と、京都との関わりについてご紹介します。
利尻昆布の特徴
表面が硬質で分厚く、出し汁が透明で色がつきにくいことです。
1年以上寝かせてから使用することによりその風味は増し、様々な料理・加工食品の素材として扱われます。
利尻昆布の利用用途
利尻昆布の利用用途は多様であり、京都においては等級の高いものは料亭での高級出しや“千枚漬”用として、中間のものは“出し”用として、その下のものは“木の芽煮”用や“とろろ昆布”用の加工原料として使い分けられてきました。
京料理
京料理は多くの場合、素材の“色”を大切にするが求められまず。ですから、昆布の表面がはがれたり、出しそのものに色が付くことの少ない「利尻昆布」が多くの料理人、職人に選ばれてきたのです。
千枚漬
“千枚漬”は真っ白なカブラを使った繊細なお漬物です。京漬物の代表的存在で、昆布の旨味と歯切れのよさ、まろやかな風味を出すために利尻昆布が重宝されてきました。
木の芽煮
“木の芽煮”の原料として利尻昆布が重宝されてきたのも、歯切れのよさが求められてのことです。“木の芽煮”は一度炊き上げた木の芽と昆布を包丁で叩き、細かくミジン切りにした佃煮です。作業の都合上、軟質の昆布ではペースト状になってしまい、独特の食感が失われてしまうのです。
出し用
京都では、利尻昆布を出し用として使う場合に工夫が施されます。まず利尻昆布は硬質のため、出荷後約1年は出しがでにくいのです。そのため、料理人は1年以上寝かせた囲物(ひねもの)を求めます。硬い表皮の間で熟成された利尻昆布は実に深い味わいになり、京料理を支えているのです。
このように利尻昆布は、ときには主役、ときには名脇役となって様々な活躍をみせ、京の食文化と、今も昔も深く関わっているのです。
- 京都と昆布のつながり
-
- 流通・加工の歴史
- 京都と利尻昆布